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​Silverman'The arithmetic of elliptic curves' と''Advanced topics in the arithmetic of elliptic curves'および Peter schneider 'Galois representation and (Φ,Γ)modules'の備忘録を載せています

Silvermanの'The arithmetic of elliptic curves' (GTM106)の感想

1、2章で閉体とは限らない体上での代数幾何入門をする。一般の体上での楕円曲線の定義(種数1の非特異代数曲線で固定点を持つもの)、からワイエルシュトラウス方程式と同型であることを導くために,一般の体上でのリーマンロッホ の定理までハーツホーン に一部委ねながら準備している。代数曲線の圏と関数体の圏の間の圏同値のところはこの本で今後重要になる部分であり、純非分離拡大というと学部3年生くらいまで難しいイメージだったが正標数の体上の楕円曲線の文脈で、K(C)/K(C)^qという形で自然に現れるのが興味深かった。これに対応する楕円曲線の射が、純非分離射であり、後にp倍写像が純非分離であるような楕円曲線をsupersingularと呼ぶが、重要な楕円曲線のクラスとなる。

 3章で、閉体とは限らない体上で「種数1で固定点を持つ代数曲線→Weierstrass方程式で定義される代数曲線と同型」を示す時に lemma5.8.1を使う。どういうことかというと、L(6(O))という \bar{K}上のベクトル空間に対して、\bar{K} \otimes_K L(6(O))はL(6(O))と\bar{K}上のベクトル空間の同型になり、つまり閉体上基底を取れたのが、うまいことK上の基底に取り替えれるのである。「うまいこと」というのはこの同型で取り替えるということだが、そもそもこの同型はヒルベルト定理90から存在がわかる行列の列を並べた基底を採用すれば良いことがわかる(演習問題)

 

なお、lemma5.8.1はここだけではなく10章のp320、step(ⅱ)でも使う。

3章から楕円曲線に入る。種数1の固定点を持つ非特異曲線という定義から、リーマンロッホ を使って楕円曲線のWeierstrass方程式が出てきたり、EとPic0(E)の同型から楕円曲線に群構造が入るのが感動した。

4章で形式群が導入される。冪級数fとFの組み概念(F,f)で書いているのがよくわからなかったが、単なるR[[x,y]]の元だと思っている時は、f, (形式スキームの圏における)群対象だと思っている時は Fと書いていると思って納得した。E:y^2+a1xy+a3y^3=x^3+a2x^2+a4x+a6でz=-x/y,w=1/zと置換して、アフィンの原点に群の単位元が来るようにする(変換後も非特異性、種数、固定点が保たれるので楕円曲線のまま)。変換後の楕円曲線の群演算後のz座標によって楕円曲線に付随する形式群を定義する。交点を計算する時にωをzの冪級数で表しておくことが必要だが、その時にヘンゼルの補題を使う。Z[a1,a2,・・・,a6][[z]]は局所環とは限らず、ヘンゼルの補題もそれに応じて一般の完備の環の場合で準備しないことに注意する。楕円曲線に付随する形式群を定義した後、形式群の一般論が述べられる。

 形式群という(群)対象があるなら、その間の射は冪級数である。冪級数を準同型と呼ぶことに最初は慣れないかもしれないが、m倍写像と形式群に付随するlogは特に重要である。

 形式群に付随するlogは、身近な例で言えば、p進対数関数にその原型がある。例えば、p進対数関数がpZpとZp×の間に同型を与えているのは、形式群に付随するlogがZpの極大であるpZpに誘導する群の同型と解釈できる。logは局所体の議論でも重要だが、本書の主題である楕円曲線においては、楕円曲線の形式群に付随するlogが重要である。任意の形式群は形式加法群Ga^とlogという準同型を通して同型になる(!)が、この形式群の同型は、logが収束するとは限らないので、局所体の整数環の極大イデアルに群の同型を誘導するとは限らない。nが十分大きければ、極大イデアルのn乗とF(m^n)の間に群の同型を誘導する。この章での準備は7章:局所体上の楕円曲線のところで多用される。

5章からは基礎体を色々動かして楕円曲線論を論じる。まずは5章、有限体から。

古典的な不等式|E(Fq)-(q+1)|≦2√qの証明から入り、この不等式もweil予想という大きな結果から従うことを確認する。3章までで準備したTate加群の性質を使って楕円曲線の場合にweil予想を証明する。途中に、閉体上のSupersingularな楕円曲線を特徴付け、その同型類の個数を微分方程式を用いて決定するという興味深いパートもある。Supesingularな楕円曲線(p倍写像が純非分離)は、j(E)∈F_p^2という性質を持つ(Theorem3.2で、(ⅲ)のj(E)∈F_p^2は()の中に入れても良いことに注意)ので、閉体上の楕円曲線の同型類はj-invariantで分類されることから、F_pの閉体上、supersingularな楕円曲線の同型類は有限個しかない。さらに、igusa polynomialを使って、その個数がきっちり求まるというのである。

 

 |E(Fq)-(q+1)|≦2√qの証明では、「絶対ガロア群Gal(Fq-/Fq)が楕円曲線に作用していて、q乗フロベニウスでEの元が動かない時、Gの作用でEの元が動かないこと」がポイント。絶対ガロア群は巡回群の意味ではFrqで生成されていないが、位相的には生成されている(〈Frq〉のクルル位相の意味での閉包が絶対ガロア群に一致する)ので、そこから従う。これは、位相群の練習問題としてとても良い。

6章は複素数体上の楕円曲線。楕円の周りの長さを求める積分から楕円曲線が歴史的には生じたこと(楕円と楕円曲線は決して無関係ではない!)、ペー函数、σ関数の定義と性質などが論じられた後、「複素トーラスとC上の楕円曲線が群かつリーマン面として(!)同型である」・・・(🍩)という主定理を証明する。楕円曲線の複素トーラスは、楕円積分(多価関数√の入った積分!)の被積分関数をwell definedにするための場であり、P1に(多価性を排除するため)2つの切り込みを入れて貼り合わせたものがトーラスである。

(🍩)の写像はφ:zmodL→[\wp(z):\wp(z):1], 0modL→[0:1:0]で与えられるが、この写像が全単射群準同型、正則同型であることを示す。σ関数の擬周期性を利用して群準同型であることを示す。リーマン面として逆も正則写像であることをAECでは、φが全単射かつ余接空間に誘導する写像が線形同型であることから示している(梅村先生の「楕円関数論」でもAECのと同じ議論)。あるいは「全単射正則写像の逆写像が正則であること」がわかればいいので、この証明はリーマン面の一般論でいくつかの方法(局所的にはCの逆関数定理に他ならない,あるいはフォルスターのリーマン面などに載っている分岐指数を使った方法)を認めればそれでもいいように思う。Tate加群が1次コホモロジーH_1(E(C),Z_p)と同型であることも面白かった。これの証明には、一般に(コ)ホモロジーの係数環を変更する方法である普遍係数定理を用いた。数ヶ月前に松村の自主ゼミでTorとかを勉強した後だったので使えて嬉しかった。φの逆写像も実は明示的に積分を用いて与えられる。

7章は局所体上の楕円曲線である。(1次元)局所体は、離散付値について完備かつ剰余体が有限な体と定義される。しかしこの章では、剰余体が有限との仮定は特には使わない。というのも、この章における主眼は完備離散付値体に対して玉河数[E(K):E_0(K)]の

有限性である。特にKがQpの最大不分岐拡大である時が重要であり、この場合剰余体はもちろん有限ではない。この有限性を使って、Neron Ogg Shafarevichの判定法という、Tate加群への惰性群の作用で還元の様子を調べるという定理が示される。

玉河数の有限性については、Neron model(SpecR上の群スキームでEをgeneric fiberに持ち、Neron Mapping Propertyという普遍性を満たすもの)を用いた証明が知られている。この本の続編であるAAECの範囲ではあるが、ゼミではNeron modelを使った証明を行った。

 

 

8章は代数体上の楕円曲線である。モーデルヴェイユの定理の証明に主眼がある。

モーデルヴェイユ定理の証明は、E(K)/2E(K)の有限性(弱いモーデルヴェイユの定理)と高さ関数を定義するパートに別れる。難しいのは弱いモーデルヴェイユの定理の方で、K([m]^-1E(K))/K(たとえばE:y^2=x^3-7x/Qなら、rankE=0であり、E(Q)=0を認めるとQ([2]^-1E(Q)=Q(E[2])=Q(√7)のような拡大であるが、Eのランクが1以上だと、有限個の代数的な元の添加とはいかない)が有限次拡大であることの証明に帰着することが群のコホモロジーの理論からわかる。この体拡大はexponent mのアーベル拡大であり、Kが十分に1の冪根を含めばいわゆるKummer拡大である。1の冪根を全て含むようにK

を拡大して示して良いことがわかるので、Kummer理論から、その有限性が示される。この有限性の証明において、S単数のSを有限を保ったまま十分大きくすればPIDにできる、という主張がかなり本質的であり、S単数のイデアル類群=イデアル類群/〈Sの付値に対応する素イデアルたち〉という関係を初等的に示すか、幾何学的に見てイデアル類群の有限性を認めればイデアル類群を因子類群と考えるとわかりやすい。

 一般の基礎体Kに対してE(K)/mE(K)が有限だからと言って、E(K)が有限生成とは限らない。実際7章で示した玉河数の有限性(から導かれるE(Q_p)はZpと同型な指数有限の部分群を持つという主張)を使って少し洒落た例をあげると、♯E(Q_p)/mE(Q_p)≦♯E(Q_p)/mZp=♯E(Q_p)/Zp♯Zp/mZp<∞だがE(Q_p)は有限生成ではない。しかし、アーベル群E(K)に対して高さ関数が定義できるときは、E(K)/mE(K)が有限ならE(K)が有限生成であることも言える。E(Q)に対して高さ関数を定義することで、Mordel weilの定理の証明を完了する。

10章では、モーデルヴェイユランクの具体的な計算と、局所大域原理について触れられている。

局所大域原理について:genus0の場合や、genus1の場合でも楕円曲線の場合は(固定点があるので)局所大域原理が成り立つ。しかし、genus1の代数曲線で固定点がないもの(これは必ず楕円曲線のtorsorになることが知られている。演習問題10.3を参照。)については、局所大域原理が満たされないことがある。この満たされなさ具合を測る群として、Tate shafarevich群が導入される。「局所大域原理の満たされなさ度合いを測る」というのは、正確には、「山(E/K)={e}とE/Kの任意のtorsorは局所大域原理を満たすことが同値」という主張を指している。この主張を理解するためには、ガロアコホモロジー的な理解だけではだめで、torsrorの商集合であるWeil chatlet群とガロアコホモロジーの関係、つまりWC(E/K)とH1(G_K,E)が同型であることを理解しなくてはならない。Torsrorは楕円曲線Eのtwist(閉体まで持ち上げれば同型になる曲線)の一種であり、Twist(C/K)とH1(G_K,Isom(C))の間に全単射があることが重要である。与えられたtwistに対応するガロアコホモロジーのコサイクルが存在する部分が非自明であるが、この全射性から、Weil chatlet群とガロアコホモロジーの同型の全射性も示される。なお、先生から指摘を頂いたのだが、このヴェイユシャトレ―群と1次ガロアコホモロジーの同型は、Eを任意の代数群にも置き換えても成り立つ(ただしその場合H^1は群ではなく点付き空間としての同型である)。Weilの「Galois cohomology」に​記述がある。

 Peter Schneider 'Galois representation and (φ,Γ)modules (Cambridge studies in advanced mathematics)の感想

p進表現(p進体の絶対ガロア群が連続かつ線形に作用する有限生成(p進体の整数環上の)加群をp進表現という)を(φ,Γ)加群という環上の加群の言葉で置き換えるという本。最初の100pは、(φ,Γ)加群を定義するために分岐付きWitt環、LubinTate理論、tilt, 2次元局所体、を準備するために費やされる。

1.1:Rmified vitt vectors

 

 分岐付きWitt環を定義し、その性質(大きく分けて、1. W(B)_L=lim←W(B)_l/π^mW(B)_L 2.W(B)_Lは完備な標数0の局所整域で、特にBがPerfectなときPIDであることがいえ、CDVRとなる。3.W(k)_L ≅ oの3つ)を示す。

分岐付きWitt環の定義は、Witt多項式(この多項式は、例えばZ/pZから取ってきたa_0・・・,a_nに対してΦ_n(a_0,・・・,a_n)∈Z/p^n +1Zを返すので、なるほどZ/pZからZ/p^nZの元を並べたZpの元を作ることができそう、というのが嬉しい。それを言っているのが最初の2つのlem)。

 Φ_B:B^N→B^Nをこのwitt多項式を使って定義すると、ImΦBは当てるとmodπでq乗するBの自己準同型σ(有限体のFrobeniusの拡張)を用いて記述できる(Prop1.1.5の(ⅱ))。σ(Φn(X0,・・・,Xn)+Φn(Y0,・・・,Yn))≡Φn+1(X0,・・・,Xn+1)+Φn+1(Y0,・・・,Yn+1)modπ^{n+1}Bを示すことで、{u_n=Φn(X0,・・・,Xn)+Φn(Y0,・・・,Yn)}に対してProp1.1.5の(ⅱ)を適用することでΦn(S0,・・・,Sn)=Φn(X0,・・・,Xn)+Φn(Y0,・・・,Yn)、Φn(P0,・・・,Pn)=Φn(X0,・・・,Xn)・Φn(Y0,・・・,Yn)を満たすSn,Pn∈o[X0,・・・,Xn,Y0,・・・,Yn]が見つかる(1.1.3)。

このSn,Pnを用いて集合B^Nに、通常の直積環とは異なる演算を定義する。

環であることを示すには、W(B)_Lではなく、まずはB1=o[X_b|b∈B](Bの元で添字付けられたo係数の多項式環)に対し、W(B1)_Lが環になることを示し、そこから自然な全射でW(B)_Lに環構造が受け継がれることを確認する。なお、演算のうち片方を直積環の演算に変えても、環にならない。分配法則が成り立つという意味において整合性の取れた和と積になっているのである。

 

1. W(B)_L=lim←W(B)_l/π^mW(B)_L

 

  素元π(素元は同伴を除いて無数にある)の選び方によらずW(B)_Lが定まるのかと言う疑問が残るが、これは 1. W(B)_L=lim←W(B)_l/π^mW(B)_L という特徴付けにより明らか。

  W(B)_LはΩ(p10、具体的にo係数の多項式の列でかける写像)によってo代数の構造を持つ。

πb(πはoの元、bはW(B)_Lの元)などと書くときは、Ω(π)・bと同一視してそう書いている。W(B)_Lの標数が0であることを示す時に分岐する場合はu(0,・・・,1,0,・・・)が0でないことを言う必要があるが、アプリオリにはわからないp・1=Ω(p)というのを事前に示す必要があると言える。

 

2. W(B)_Lは完備な標数0のlocal integral domainで、特にBがPerfectなときDVR

 

Bがperfectという条件をどこで使っているのかに注意を払う必要がある。Bが単にkの拡大というだけでも、W(B)_Lはlocal domainで標数0ということは言え、B:completeはどこにも使っていない。しかし、W(B)_LがDVR(local PID which is not a field)となるには、W(B)_LがPIDであることを示す必要がある。ここでB:perfect使う。実際、W(Fq(t))は整閉整域にすらならない。表面的には現れていないが、W(B)_Lの唯一の極大イデアルV1(B)_Lが単項であることを示す時にB:perfectの仮定を使う。Prop1.1.19の(ⅲ)が効いている。このことからRemark1.1.20の環論の定理が使え、PIDであることがわかる。

 

3. W(k)_L ≅ o

 

 Prop1.1.23が大きな結果である。(ⅳ)はp21の一番下の図式のs_B,m+1が同型であることを写像の対応を具体的に書き下すことで示し、five lemmaから、s_B,mが同型→s_B,m +1が同型が従うので帰納的に全てのm≧1でS_B,mはisomになるという綺麗な仕組みみから得られる。Prop1.1.26はCorのBにW(B)の係数拡大を当てはめて示されるが、(c)の確認が結構ややこしい。

1.3 Lubin Tate Formal group laws

 

完全分岐拡大の合併は完全分岐とは限らず安直にその合併を考えるわけにはいかないが、Lubin Tate拡大という形式群のn等分点を添加して得られるL_nという完全分岐な体の列には包含があり、その全ての合併L_∞を考えることができる。これの剰余体もkである。

テキストではまとめてL_n/Lが完全分岐であることを示しているが、L_(n +1)とL_nの関係を見る方が賢い。ここでの完全分岐は、アイゼンシュタインの根で生成される拡大と見るのが一番良い。それはL_n/Lが完全分岐なのを示す部分だけではなく、o_[L_(n +1)]=o_L_n[z_(n +1)]と書けることからL_∞の整数環を計算する上でも役に立つ。このL_∞のcompletionは重要なperfectoid fieldの例となる。

1.4 Tilts and filed of norms

  Perfectoid体を定義し、♭(半音下げる)をとるという操作(tilting)を定義する。tiltingと言うのは極限操作である。この操作で拡大次数が保たれることすら全く自明ではない。tilting correspondenceという♭に対して♯(半音上げる)という操作で(K^♭)^♯=Kとなるような操作を、Witt環を使って定義する。Witt環を使うのは、正標数から標数0を作るための道具としては自然だろう。Tiltingによって方程式がどの程度変わるか、というのが考えたいところ。K^♭の演算は和については成分ごとの和だが、積については極限操作になるので、同じ方程式でとはいかない。つまり、K=K(α)のとき、K(α)^♭=K(β)と書いた時、βとαの関係について何か言えるか?という問題が残る。

 

 

 ノルム体は、ルビンテイトのTate moduleの生成元tをO_L∞^に埋め込んだ元をk((x))に代入する写像の像として定義される正標数の局所体である。これ自身巨大な体であるが、さらに完全閉包をとって、完備化すると、ようやくL_∞^ ♭になる。ノルム体と書けるのは、体のノルム写像の逆極限で書けるからである。

Advanced topics in the arithmetic of elliptic curves 虚数乗法の章の感想

 

第1回

 例1.31まで。楕円曲線では[m](mは整数)倍写像が重要なisogenyだが、[m]のmとして整数以外を考えれる状況がある。End(E) (Rと同型)がZより大きい時、EはRにCMを持つという(E has CM by R)。RはKの整数環R_Kだけとかは限らないが、R_Kに限定すると簡単になる。R_Kに限定しない場合、RはKのorderと呼ばれるものになり、Z+fR_Kのような形になる。

End(E)とRの同型は、一意化の写像を通してlatticeの複素数倍で定義する。こうして定義した場合、C/Λの方での微分形式ωの引き戻しはとても簡単で、同型で引き戻すことで[π]ω=πωを満たすことがわかる。

 C上の楕円曲線の同型類はCl(R_K)-torsorになっており、類数個しかない。例1.3.1では、Z[i]にlatticeを持つelliptic curveを、イデアル類群の方ではなく楕円曲線の議論、つまりガウスの整数環の場合はiΛ=Λであることを使って楕円曲線の方程式を求めている。するとj invariantはただ1つ求まる。Z[i}がUFDであることを、楕円曲線のlatticeを使って証明しているのである ! Z[√-3]でも同じことができる。

Z[√-5]なら2つ同型類が出てくるが、これの方程式を求めるのは一気に難しくなり、j(E)が整であること、ヒルベルト類体論の理論が必要となる。

 

第2回

 楕円曲線のイデアル等分点の構造が定義される。代数的な議論が小難しい。

 

第3回

 K(j(E),E_tors)が K(j(E))のアーベル拡大であることを示す。CMを持つことからZ加群としてのAutに埋め込めるのだが、さらにR_K加群としてのAutに埋め込めることにもCMを持つことを使う。キッチリ論証できたと思ったら最後の、一番最後のAur_R(R)とR^×が同型のところで、1の行き先だけで決まることが言えなくて赤っ恥をかいた。

 Kの絶対ガロア群からKのイデアル類群への写像が、楕円曲線を使って定義されるが、この写像が楕円曲線の選び方によらずに定まることを論証するのが難しい。(a・E)^σ=a^σ・E^σを言うのであるが、左辺は方程式の係数をいじる代数的なもの、右辺は公式を動かすものであって、これらを結びつけるのは一般に難しい。位相群における蛇の補題を使って、a・Eをidentity componentとして特徴つけれることを証明することになる。

 

 

第4回

 イデアルによる類体論の主役、アルティン写像を定義。ヒルベルトの分岐理論より(大げさ?)分解群から剰余体のガロア群への全射があるが、それは拡大が不分岐な時kerが群論より(分解群は、素イデアルの集合へのガロア群の推移的な作用のfixした素イデアルにおける固定群だと思うのが良い。そうすると、ker(惰性群,位数I)は、分岐指数の1になって同型になる。そこでフロベニウスの持ち上げを(L/K,p)と書いてアルティン記号という。これはしっかり準同型である。

これが全射なのはL関数を使って「ほとんど全ての素イデアルが完全分解するなら」

を使って、ray類群が次数1の素イデアルを無限に含む(算術級数定理)とセットで示す。

kerの方は類体論のdeepな部分。

 

第5回

 前回準備したイデアルによる類体論を使って、K(j(E))がKのヒルベルト類体であることを示す。

第6回 

 中心単純環のことがわかっていれば自明な補題5.2を初等的に示す。さらにCor 5.4で、次数1というのが決定的に聴いている証明であることを理解する。

 

第7回 

 K(j(E),h(E[c]))がKのcを方としたray類体であることの証明。p進体の類体論はQ_p^ab=Q_p^LTQ_p^unrであった事の虚二次体類似である。c=1の時ヒルベルト類体がK(j(E))となるが、これでK(j(E))がヒルベルト類体、としては証明を利用しているので循環論法になる。

 

第8回

 j(E)が代数的整数であること。CMの作用(l進)とガロア群の作用(p進)が噛み合わないという証明。2つの作用が可換になるかどうかが大事。

 

 

第9回

 CMの主定理。Eの係数にσを当てるという代数的な作用を、格子をイデールによって写すという解析的な作用に置き換えるという主張。第7回で示したK(j(E),h(E[c]))がKのcを方としたray類体であることや、K(j(E))がKのHilbert類体であることと同値である。

 

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